仕事がない一人親方必見!8つの仕事のもらい方と営業のポイント

2024年の働き方改革や建設業の深刻な人手不足は、実力ある職人にとってかつてない追い風。元請けに頼らず、適正価格で直接仕事を受けるチャンスが、今まさに広がっています。

営業が苦手な職人でも明日から実践できる仕事のもらい方から、元請けに買いたたかれないための単価交渉術まで解説します。

この記事の要約

  • 仕事が取れない原因は技術不足ではなく、元請け依存の構造と営業不足
  • 営業が苦手でも、異業種連携・マッチングサイト・地域特化のWeb集客の組み合わせで段階的に直接受注を増やせる
  • 適正単価での受注には相場の把握・根拠の準備・段階的な価格交渉が必須

一人親方で仕事がもらえない3つの原因

一人親方が仕事を得られない原因は、「元請け依存の業界構造」「技術があれば客が来るという誤解」「価格競争への巻き込み」という3つの構造的な問題にあります。

元請けに依存する業界構造

最大の問題は、元請けからの連絡を待つだけの「待ちぼうけ」スタイルが、経営の首を絞めている点です。

建設業界の多重下請け構造において、下位に位置する一人親方は、元請けにとって都合の良い「調整弁」として扱われがちです。元請けが忙しい時は猫の手も借りたいほど呼ばれますが、工事が減れば真っ先に切られるのは外部の一人親方です。

建設技能労働者の15.6%にあたる約51万人が一人親方として働いていますが、元請けからの仕事に依存し、自ら営業活動を行う割合は低いのが実情です。

「仕事をもらう」という受け身の姿勢でいる限り、発注権を持つ元請けの胸三寸で収入が決まります。どれほど腕が良くても、元請けの営業力が落ちれば、道連れで仕事がなくなる構造から抜け出せません。

出典:Wikipedia「一人親方」

腕が良ければ客は来るという誤解

多くの職人は技術を磨くことに心血を注ぎますが、残念ながら「高い技術」は「仕事を受注する理由」にはなりません

発注者(特に一般顧客)は素人であり、壁紙の継ぎ目の美しさや、配管の正確さを工事前に判断できないからです。顧客が工事前に判断できるのは「レスポンスの早さ」「身だしなみの清潔さ」「説明の分かりやすさ」だけです。

「いい仕事をしていれば口コミで広がる」というのは、地域社会の結びつきが強かった時代の成功体験です。現代では、どれほど技術が高くても、その価値を翻訳して伝えなければ、存在しないのと同じ扱いを受けます。技術力は「リピート」を生む要因にはなりますが、「新規受注」を生む要因にはなり得ないという現実を直視する必要があります。

価格競争に巻き込まれる環境

発注者の多くが「工事は安ければ良い」という認識を持っており、相見積もりにおいて最安値の業者以外は切り捨てられる傾向が強まっています。

品質や安全性を担保するための適正価格で見積もりを出しても、価格のみを判断基準とする顧客からは高いと判断され、安さを売りにする競合他社に仕事を奪われてしまいます。その結果、技術力があっても価格競争の土俵に乗らなければ、そもそも「受注」という入り口にすら立てない状況に陥っています。

一人親方仕事のもらい方【案件紹介編】

不確実な飛び込み営業は避け、向こうから仕事を頼んでもらえる継続案件につながる方法を3つ紹介します。

異業種の職人と「相互送客」の同盟を結ぶ

同業者はライバルですが、異業種は最強のパートナーです。

例えば、水道設備屋がトイレ交換をする際、「床のクッションフロアも張り替えてほしい」と頼まれることがあります。しかし、設備屋は床のプロではないため、「誰か床を貼れる奴はいないか」と常に探しています。

実践すべきアクション

現場で一緒になった他業種の職人とは、休憩時間などに必ず名刺交換をし、以下の言葉を伝えておきます。

「水回りの床補修や、壁の穴埋めが必要な時は声をかけてください。逆に、自分の現場で配管や電気の移動が出たら、すぐに〇〇さんに連絡します」

このように「お互いの専門外を埋め合う同盟」を作ることが、一人親方が食いっぱぐれないための最強のセーフティネットになります。

「不動産管理会社」の物件維持・リフォーム案件を狙う

アパートやマンションを管理する不動産会社は、内装だけでなく、建物全体の維持管理を行う「工事の元締め」です。しかし、大手ゼネコンやリフォーム会社に丸投げすると費用が高額になるため、「直接発注できて、安く小回りが利く一人親方」を常に探しています

「不動産管理会社 地域名」で検索し、電話でアプローチしましょう。

塗装・防水業の営業ポイント

「アパート共用廊下の鉄骨階段サビ止め」や「ベランダの防水トップコート塗り替え」など、大規模修繕まではいかない小〜中規模のメンテナンスを提案します。「大手を通さない施工なので費用は抑えられます」という提案は、管理会社にとって非常に魅力的です。

大工・多能工の営業ポイント

退去後の原状回復だけでなく、「家賃を上げるためのリノベーション」や「和室から洋室への変更」、「建具の調整」などを提案します。築古物件の空室対策に悩む担当者にとって、「低予算で見栄えを良くする提案」ができる職人は重宝されます。

管理会社にとって一番の悩みは「オーナー(大家)への修繕費用の交渉」です。「直接施工で安くなる」というカードは、管理会社がオーナーを説得する材料になるため、話を聞いてもらいやすくなります。

地域の工務店へ「隙間」を埋める提案をする

地域の工務店への営業は、メインの職人の座を奪おうとすると失敗します。そうではなく、「忙しい時だけのピンチヒッター(2番手)」として入り込むのが正攻法です。

工務店は、繁忙期や急な欠員が出た時に「いつもの職人が捕まらない」という事態に必ず直面します。その「困った瞬間」の第一想起(最初に思い出す人)になることを目指します。

訪問時のキラーフレーズ

「社長が懇意にされている職人さんがいらっしゃるのは承知しております。もし繁忙期などで、いつもの職人さんの手が足りない時があれば、スポットの応援として使ってください。」

「メインを変えてくれ」ではなく「困った時の予備として置いてくれ」という提案であれば、相手もリスクがないため、名刺を受け取ってもらえる確率が格段に高まります。

一人親方仕事のもらい方【直接受注編】

「マッチングサイト」「Googleビジネスプロフィール」「ニッチ専門ページ」「地域密着チラシ」「Instagram」の5つの手法を組み合わせることがポイントです。

下請けから抜け出し、一般のお客様から直接仕事を受けるための仕事の探し方を解説します。

マッチングサイトに登録して営業の手間を省く

建設業向けのマッチングサイトは、自分で営業しなくても、あなたの技術を求める顧客を自動で連れてきてくれるツールです。特に「ミツモア」などのプラットフォームは、すでに工事を頼みたいと思っている顧客が集まっているため、契約までのスピードが圧倒的に早く、2024年に建設系サービスで1万件以上の成約があり、案件の数も豊富です。

まずはマッチングサイトの中で、実績と口コミを集めることに集中しましょう。良い口コミがたまれば、自然と仕事が入るようになります。ポイントは次の通りです。

プロフィールで信用を得る

マッチングサイトでは、プロフィールが営業担当の代わりになります。顔写真と工事の実績写真を載せ、経験年数や工事の件数を具体的な数字で示しましょう。「15年の経験」「工事の実績300件」のような表現が信用されやすくなります。

丁寧な連絡で違いを出す

お客様への最初の連絡は、契約が決まるかどうかに関わる重要なことです。お客様の困りごとに理解を示し、見積もりには理由を添えて説明しましょう。「なぜこの金額になるのか」を伝えることで、お客様が納得しやすくなります。

口コミを生かして仕事を続けて受ける

良い口コミは、未来のお客様に対する信用の証拠です。作業が終わった直後、お客様が喜んでいる時に口コミをお願いしましょう。書かれたすべての口コミに丁寧に返信することで、さらに信用されるようになります。

参考記事:成約率が劇的に変わる!魅力的なプロフィールの作り方

参考記事:【例文付き】依頼者に選ばれるメッセージ術

参考記事:良い口コミを集めて信頼度UP!次の依頼につなげる方法

一人親方に評判のミツモアをチェック

「Googleビジネスプロフィール」で近所の緊急需要を拾う

「〇〇市 雨漏り」といった地域のキーワードを入力して検索するユーザーは、「今すぐ来てほしい」という緊急性の高い客です。取り込むには、Googleビジネスプロフィールへの登録が必須となります。

完全無料で登録でき、以下の情報を充実させるだけで、電話が鳴る回数が変わります。

  • 対応エリアの明記:「〇〇市から車で30分圏内」など、地元密着をアピール。
  • 現場写真の投稿:ビフォーアフターの写真をスマホからアップするだけ。「ちゃんと仕事をしている会社」という証明になります。
  • 口コミへの返信:悪い口コミがついた時こそ、誠実に返信することで、第三者に「誠実な対応をする人だ」と印象付けられます。

「ニッチな専門」ページで勝つ

予算をかけてホームページを作る場合、「リフォーム全般」のような漠然としたサイトを作っても、大手企業に埋もれて誰にも見られません。

一人親方がWebで勝つ唯一の方法は、「特定の悩み」に特化した専門ページを作ることです。

  • 悪い例: 「お家のことなら何でも相談。〇〇工務店」
  • 良い例: 「ドアの開け閉めが重い方へ。ドアノブ交換・調整専門。最短30分で直します」

「ドアノブ修理」「網戸張り替え」「手すり取り付け」など、大手がやりたがらないニッチな入り口を作ることで、広告費をかけずに「その悩みを持つ人」をピンポイントで集客できます。小さな修理で信頼を得れば、そこから大きなリフォームへつながることも珍しくありません。

「半径1km」はチラシを活用する

Web集客は強力ですが、リフォームの優良顧客である高齢者層(築古持ち家層)には、依然として「紙」が最強の媒体です。

闇雲に撒くのではなく、自宅から「半径500m〜1km」に絞り込み、何度も目に触れさせることで「近所の頼れる職人さん」というポジションを確立します。

捨てられないポイント①「ドアノック商品を用意」

いきなり「リフォーム全般」と書いても響きません。「網戸の張り替え 1枚〇〇円」「蛇口の水漏れ 〇〇円」など、数千円で頼める小さな困りごとを入り口にします。一度呼んでもらえば、そこから本丸のリフォーム提案につながります。

捨てられないポイント②「顔と住所を大きく出す」

「どこの誰かわからない人」を家に入れるのは恐怖です。腕組みした怖い写真ではなく、笑顔の顔写真と、近所であることをアピールすることで、警戒心を解きます。

捨てられないポイント③「QRコードを載せる」

紙を見て興味を持った人は、必ずスマホで裏取り(検索)をします。名刺やチラシにインスタグラムやHPへ飛べるQRコードを載せ、「普段どんな仕事をしているか」を見せることで、問い合わせの最後のひと押しになります。

インスタグラムを「最強のデジタル名刺」にする

一人親方のインスタグラム運用において、フォロワー数を増やす必要はありません。目指すべきは、インフルエンサーではなく、地域の人に見つけてもらうための「デジタルカタログ」です。

お客様は「どんな仕上がりになるのか」「怖くない人が来るか」を確認するためにインスタを見ます。

明日からできる運用ポイント①「ハッシュタグは地域名で埋める」

「#リフォーム」のような大きなタグは意味がありません。「#〇〇市リフォーム」「#〇〇区クロス張り替え」「#(近所のランドマーク名)」など、その地域に住んでいる人しか検索しないワードを入れます。

明日からできる運用ポイント②「作業中の背中とお客様の笑顔を撮る」

綺麗な完工写真だけでは、メーカーのカタログと変わりません。「養生をきれいにしている様子」や「掃除をしている姿」、そして「喜んでくれたお客様とのツーショット(許可必須)」を載せることで、「丁寧で親切な職人」という人柄を伝えます

インスタグラムは毎日投稿する必要はありません。ただし、最終更新が半年前だと「もう廃業したのかな?」と思われます。週に1〜2回、現場の様子をアップするだけで十分な信頼担保になります。

一人親方仕事のもらい方【成功事例編】

ここで紹介する3つの事例は、マッチングサイト「ミツモア」を通じて下請けから抜け出し、適正な価格で直接仕事を受けることに成功した実例です。

【事例1】YDKリノベーション・阿部裕樹さん(リフォーム)

YDKリノベーション・阿部裕樹さん

抱えていた悩みと背景

長年、工務店やリフォーム会社からの下請けを仕事の中心としていました。仕事の量は安定していましたが、価格競争が激しく利益が少ない状態でした。元請けの考えに左右され、自分で価格を決められないことに悩んでいました。

将来の事業の柱を育てるため、利益率の高い個人のお客様との直接取引を増やす必要がありました。しかし、法人との取引が主だったため、個人のお客様にどう営業すれば良いか全く分からない状態でした。

実践したこと・成果

現状を変えるため、個人のお客様と直接つながる手段として、Webでの集客を始めることにしました。リフォーム全般に手を出すのではなく、自身の強みを生かせる分野に絞って展開。「ドア修理」という専門分野に特化することにしました。大手が見過ごしがちな小さな修理にこそ、安定した需要があると見込んだからです。

また、個人のお客様とのやり取りも根本から見直しました。相手は専門知識がないため、専門用語を避け、修理の方法や料金を丁寧に分かりやすく説明することを徹底。お客様の不安に寄り添い、信頼関係を築くことを最優先にしました。

問い合わせには即座に対応し、見積もりも早く出しました。お客様は問題をすぐに解決したいと考えているため、対応の速さが信頼と仕事の受注につながると考えたからです。

結果として、Webでの集客を始めた初月から10件以上の契約が決まりました。下請け仕事だけに頼らない、利益率の高い個人向けの事業を確立することに成功しました。

成功のポイント

成功のポイントは、元請けに頼る下請け構造から抜け出し、個人のお客様を直接の対象とする商売へ考え方を完全に切り替えたことです。大手と競合するリフォーム全般ではなく、自身の専門性を生かせる「ドア修理」という競合の少ない市場に絞り込み、価格競争を避けたことが成功の理由です。お客様の不安に寄り添う丁寧なやり取りを徹底したことで、技術力だけではない価値を生み出しました。

参考事例:Web集客未体験のベテラン建具職人がドア修理の稼ぎ頭に。初月から二桁成約を継続する秘訣を公開

【事例2】株式会社フォレストサービス・森望さん(リフォーム)

株式会社フォレストサービス・森望さん

抱えていた悩みと背景

以前は大手の下請けとして、遠くの現場へ行くことが日常でした。売上は安定していましたが、移動時間が長く身体的な負担が大きかったのです。家族と過ごす時間も限られ、労働時間に見合った働き方ができていないことに疑問を感じていました。

体を壊してしまうという危機感から、働き方を根本的に見直す必要がありました。元請けに頼った広域での働き方から抜け出し、地元に根ざした事業を行いたいと考えていました。

実践したこと・成果

理想の働き方を叶えるため、地域密着型の事業へ切り替えることを決断。地元の顧客から直接仕事を得る手段として、Webでの集客を始めました。まず、対応エリアを地元に限定し、移動時間を徹底的に削減。効率的に多くの案件に対応できる体制を整えました。

次に、仕事の受け方を変えました。大規模な案件が中心でしたが、「コンセントを30cmずらしてほしい」といった、どんなに小さな案件でも積極的に受けるようにしました。大手が敬遠しがちな小さな仕事にこそ、地域住民の切実な要望が隠れていると考えたからです。

また、単なる作業員で終わらないよう、お客様との対話を大切にしました。一つひとつの依頼に丁寧に応えることで信頼関係を構築。結果として、小さな依頼がきっかけで、より大きなリフォームの相談を受けることも増えました。

結果、Webでの集客開始からわずか3ヶ月で月間120件の契約が決まりました移動時間が大幅に減ったことで1日に対応できる件数が増え、売上を維持しながらも家族と過ごす時間を得られるようになりました。

成功のポイント

成功のポイントは、下請け時代の「広域・長時間労働」という働き方を完全に捨て、「地域密着・高効率」な働き方へと転換したことです。対応エリアと案件の規模を絞り込むことで移動にかかる費用と時間を減らし、その分をお客様への対応数と質に充てることで、売上とプライベートの時間を両立させる独自の働き方を確立しました。

参考事例:はじめてのweb集客からたった3カ月で月間120件成約達成! ミツモアで地域密着型の働き方にシフト

【事例3】お助け丸・長谷川佑磨さん(リフォーム)

お助け丸・長谷川佑磨さん

抱えていた悩みと背景

以前はリフォーム全般を手掛けていましたが、競合が多く常に価格競争に巻き込まれていました。特に「網戸一枚の張り替え」のような小さな案件は、見積もりや移動の手間がかかる割に利益が少なく、積極的に受けることが難しい状況でした。

本来であれば職人として現場作業に集中したいにもかかわらず、営業や見積もり作成といった事務作業に多くの時間を取られていました。効率の悪さを解消し、利益を得られる仕組みを作ることが急務でした。

実践したこと・成果

事業の抜本的な効率化と差別化を図るため、多くの同業者が敬遠する「網戸の張り替え」に事業を絞り込む決断をしました。小さな案件にこそ、競合のいない安定した市場があると考えたからです。専門特化することで、作業効率を極限まで高める狙いもありました。

次に、小さな案件でも利益を出せる体制を築くため、集客サイトを本格的に利用営業や見積もり作成にかかる時間を徹底的に減らすことにしました。1件あたりの対応にかかる手間と費用を最小限に抑えることで、「網戸一枚」のような低単価の仕事でも、数をこなせば十分に利益を得られるからです。

加えて、お客様が安心して依頼できるよう、料金を分かりやすく提示することを徹底。価格を明確にすることが、結果的に仕事が決まる確率を高めると考えました。

結果として、営業や事務作業の負担から解放され、職人としての現場作業に集中できる環境を実現小さな案件を効率的に数多くこなすことで、安定した収益の土台を築くことに成功しました。

成功のポイント

成功のポイントは、効率が悪いと思われがちな「小さな案件」にあえて絞り込み、Webツールを活用して「営業費用の徹底的な削減」を実現したことです。競合が参入しづらい市場で安定的に利益を上げる独自の仕組みを作りました。事業領域を広げるのではなく、絞り込むことで生産性を最大化するという逆転の発想が成功につながりました。

参考事例:対応コストが少ないから網戸一枚から受注可能。自動応募はお客様もプロもwin-winのミツモアの強み

一人親方に評判のミツモアをチェック

買叩きを防ぐ一人親方の仕事交渉術

適正単価での受注を実現するには、「適正単価の算出」「客観的根拠の準備」「段階的な交渉」という3つのステップを踏む必要があります。

STEP1「自分の適正単価を算出する」

適正単価を算出するには、市場相場の基準を確認すること、材料費・人件費・利益を計算すること、地域の相場を調べることという3つの要素があります。

業界の基準となる具体的な単価を知ることが出発点です。内装工の場合、2025年時点での市場単価は以下の通りです。

常用単価の基準

  • 下限ライン:12,000円〜18,000円
  • 経験者はそれ以上の単価が目安

手間請け単価の基準

  • 量産品:㎡あたり400円〜600円
  • 一般品:㎡あたり700円〜1,000円

市場単価の基準を下回る場合は「安すぎる」と判断できます。常用で日当1万2000円未満、手間請けで1平方メートルあたり400円未満の案件は、利益がほとんど残りません。

地域相場を調べる際は、基準値を参考にしながら、住んでいる地域での価格調整を行います。都市部では基準値の上限近く、地方では下限近くになることが一般的ですが、基準値を下回らないことが大切です。

安売りを防ぐ最低ラインとして、材料費と人件費と諸経費の合計を下回る受注は絶対に避けるという原則を決めておきましょう。

出典:職人ワーク「2025年版【手間請けと常用の違いを解説】メリット・デメリットと選択ポイント」、建職バンク「クロス職人の転職・求人情報 – 東京都」

STEP2「交渉の根拠を用意する」

単価交渉を成功させるには、感情論ではなく事実に基づいた説得材料を用意する必要があります。客観的な根拠がなければ、元請けは値上げ要求に応じる理由がないためです。

施工実績を整理する際は、過去の工事写真、完成した品質、顧客の満足度、対応した実績などをまとめておきます。技術や資格を証明する書類として、建設業関連の資格、メーカー認定資格、研修の受講履歴などを用意し、技術の客観的な証明とします。

準備には1週間から2週間かかりますが、一度作成すれば複数の取引先との交渉で使えます。

STEP3「価格交渉を行う」

単価交渉は、信頼関係のある取引先から始め、一度に大幅な値上げを避け、少しずつ進めることで成功率が高まります。

最初の交渉相手は、長期間取引があり、技術を評価している元請けを選びます。交渉の際は、「材料費の高騰」「技術向上による付加価値」「同業者との価格差」などの客観的な理由を提示します。断られても関係を悪化させないよう、「今回は結構ですが、今後ご検討いただけると助かります」という姿勢を保ちます。

一度に10%から20%程度の単価引き上げを目標とし、段階的に適正価格に近づけていきます。3ヶ月から6ヶ月かけて交渉を進め、急激な変化を避ければ取引先の理解を得やすくなります。

価格交渉が成功すれば、同じ作業量でより多くの収入を得られ、生活の安定と事業を続けられる可能性が高まります。適正価格で仕事を受けることは、品質を高めるために投資する余裕も生み出し、長期的に競争力を高めることにもつながります

2024年問題が一人親方の仕事に与える影響とポイント

2024年4月から建設業界にも本格適用された「働き方改革関連法(いわゆる2024年問題)」は、実力ある一人親方にとってかつてないボーナスステージです。

大手ゼネコンや工務店は、社員の残業規制により自社の施工能力が制限されるため、外部のプロフェッショナルである一人親方に頼らざるを得なくなっているからです。元請けは今、「安く使える職人」ではなく、「高くても納期通りにトラブルなく完遂してくれるパートナー」を血眼になって探しています

この大きな波に乗り、確実に利益を手にするために押さえておくべきポイントを最後に3つ紹介します。

「フリーランス新法」を盾に、契約を書面化する

口約束での「言った言わない」は大変危険です。特に追加工事は、なぁなぁで済ませるとタダ働きになりかねません。

2024年11月施行のフリーランス保護新法により、発注者には取引条件の明示が義務付けられました。これを好機と捉え、「新法で決まっているので、念のためメールで内容と金額を送りますね」と伝えましょう。

フリーランス保護新法では、発注事業者に対して報酬額や業務内容を明記した書面で契約を結ぶことを義務付けています。違反した場合には50万円以下の罰金が科されます。

角を立てずに言質(げんち)を取り、言った言わないのトラブルを回避するために、契約をしっかり書面化しましょう。

出典:埼玉労災一人親方部会

「コンプライアンス」でライバルと差別化する

「腕は良いが書類は苦手」という親方が世間には多い中、事務周りを整備すれば、周囲のライバルとの差別化につながります。

CCUS(建設業キャリアアップシステム)と保険

一人親方労災保険への加入はもちろん、CCUSへの登録は「技術の見える化」に直結します。ゴールドカード等のランクがあれば、初対面の元請けに対しても「確かな腕を持つ職人」である客観的な証明となり、高単価交渉の切り札になります。

インボイス登録

登録することは「消費税を払う損」だけではありません。元請けにとって「事務負担のない使いやすい業者」であることの証明となり、優先的に仕事が回ってくる要因にもなります。経過措置の「2割特例」を使えば負担を抑えることもできます。

着手金と青色申告で「手残りの現金」を増やす

売上を立てるだけでなく、現金を確実に残す経営視点が不可欠です。

着手金の請求

工事費用の30〜50%を着手金として請求しましょう。これは材料費の持ち出しによる資金ショートを防ぐための「運転資金」です。着手金を渋る顧客は、完工後の支払いでも揉める可能性が高いため、取引を避ける判断基準にもなります。

青色申告の活用

複式簿記をつけるだけで最大65万円の控除を受けられます。汗をかかずに「利益65万円分の工事」を一本こなすのと同じ価値があります。適正な経費計上と合わせれば、手元に残る現金が確実に増えます。

まとめ

一人親方が仕事をもらえない原因は、技術不足ではなく「営業不足」と「構造的な立場」にあります。

待っているだけで仕事が来る時代は終わりましたが、逆に言えば、少しの営業努力とデジタルツールの活用で、誰でも公平にチャンスを掴める時代になったとも言えます。

まずは、Googleビジネスプロフィールに登録するなど、お金のかからない小さな一歩から始めてみてください。自ら動いて獲得した仕事は、単価も、やりがいも、下請け仕事とは比べものにならないはずです。

営業が苦手なら自動で仕事が来るミツモア

「営業活動に時間を割けない」「売り込みはしたくない」という一人親方こそ、ミツモアの活用が最適解です。プロフィールを登録するだけで、あなたの技術を求めるお客様からの相談が自動で届くため、現場作業の手を止めずに新規開拓が可能です。

ミツモアが選ばれる理由

  • 待つだけで案件が届く:地域や職種を設定すれば、条件に合う仕事が通知されます。
  • リスクゼロで開始可能:初期費用や月額固定費は一切かかりません。手数料は「成約時のみ」発生するため、無駄な出費を抑えられます。
  • 適正価格での受注:元請けを通さない直接契約により、技術に見合った単価での施工が実現します。

すでに多くの一人親方が、下請け仕事の合間にミツモアを活用し、高単価な直接受注へとシフトしています。まずは無料登録を行い、自分の地域にどのような案件があるか確認することから始めてみてください。

一人親方に評判のミツモアをチェック